生命保険の「払済保険」ってどんな制度?
記事の信頼性
筆者は、終活・相続専門独立系FPとして30年超。公的金融機関で5年、独立後現在に至ります。日頃は、介護従事者、及び相続関連仕業等の専門家と協働で、多くの方からの相談を受けています。
目次
■払済保険とは
■払済保険険に変更できる主な保険種類3つ
➀終身保険
②養老保険
③個人年金保険
■払済保険のメリットと注意点
➀メリット
②注意点
■払済保険以外の保険料支払い困難時の2つの方法
➀契約者貸し付け
②減額(一部解約)
■まとめ
■払済保険とは
払済保険とは、貯蓄性のある保険において、保険料払込期間中に、保険料の払込を止めて、その時点での解約返戻金相当額を一時払い保険料に充当し、保険料の払込を完了させる方法です。保険期間は変わらず、保険金額がさがります。また、解約返戻金は減ることはなく、その後は増え続けていきます。ただし、払済保険の保険金額が所定の限度を下回る場合は払済保険に変更できないことがあります。
経済的な理由で保険料の支払い困難な時に利用されます。
■払済保険に変更できる主な保険種類3つ
➀終身保険
終身保険は、保障が一生涯にわたる死亡保険です。一方で、解約したときは解約返戻金を受け取ることができる貯蓄的な側面もあります。
払済保険に契約変更することで、死亡保険金額はその時点での解約返戻金相当額に応じて計算された額に下がり、生涯継続されることになります。
解約返戻金は、その時点から減ることはなく、少しずつ増え続けていきます。
②養老保険
養老保険は、保険期間中に死亡した場合には死亡保険金が、保険期間満了まで生存していたときは満期保険金が、同額受け取れる保険です。一方で、満期前に解約したときは解約返戻金を受け取ることができる貯蓄的な側面もあります。
払済保険に変更することで、その時点での解約返戻金相当額に応じて死亡保険金・満期保険金ともに下がり、満期期間まで継続されることになります。
解約返戻金は、その時点から減ることはなく、少しずつ増え続けていきます。
③個人年金保険
個人年金保険は、年金の財源となる保険料を支払い、一定の年齢に達した時点から年金として受け取れる保険です。主に、老後の生活準備の一手段として利用されています。
払済保険に変更することで、本来受取る予定であった年金額が、その時点での解約返戻金で再計算され、下がることになります。
解約返戻金は、その時点から減ることはなく、少しずつ増え続けていきます。
※その他にも、保険会社によっては貯蓄性を持つ定期保険等、払済保険に変更できる保険商品があるので、詳しくは生命保険会社及び、生命保険募集人にご確認ください。
■払済保険のメリットと注意点
払済保険は保険会社にとって、予定していた保険料収入がなくなることを意味します。よって、保険会社から、払済保険を勧めてくることは稀なこと。なので保険会社からの払済保険の情報はあまり多くありません。こちらでは、払済保険の実際のメリットと注意点を見ていきましょう。
➀メリット
(1)保険料の負担をなくすことができる
払済保険変更後は、それ以降の保険料の支払いはなくなります。保険料の支払いが難しくなった時の救済措置として検討することが一般的です。
(2)保障を継続することができる
払済保険変更後は、保険料の支払いが不要になっても、保障は続きます。ただし、保険金額は、少なくなるので、まずは払済保険変更のシミュレーションを保険会社に依頼してから検討することをおススメします。
(3)払済保険変更後の解約返戻金は増え続ける
払済保険変更後は、その時点での解約返戻金相当額を一時払いの保険料に充当します。一時払いした解約返戻金は、払済保険変更する前(契約時)の予定利率を引き継いで運用されます。
(4)払済保険変更後の解約返戻金の利回りの方が高くなるケースも
保険料の払込を継続していくよりも払済保険変更した方が解約返戻金の返戻率が高くなることがあります。保険会社や、商品、払済保険変更時、加入年齢等によって異なります。ご自身の生命保険はどうでしょうか?詳しくは、中立的な生命保険募集人さん聞いてみましょう!
②注意点
払済保険に契約変更するにあたっての注意点をまとめましたので、参考にしてください。
(1)特約は消滅します
例えば、主契約を終身保険として、その上に特約としての死亡保障や医療保障等を付加して加入している場合、このような保険契約を払済保険契約に契約変更すると、主契約の終身保険は維持されますが、特約としていた保障は解約され、消滅することになります。
特約は掛け捨てで、貯蓄性がないので払い済みができないためです。その特約にある保障を維持していくためには、同様の保障を新たに加入する必要があるので、払済保険への契約変更は特約の保障を含めて検討しましょう。
(2)保険金額は減ります
払済保険変更後は、保険期間は契約時との変更はありませんが、保険金額は減額されます。解約返戻金額が少なければその分、保険金額も小さくなります。
(3)元の契約に戻すことができない
原則一度、払い済み保険に変更すると、元の契約に戻すとはできません。
(4)配当金はなくなります
払済保険変更後は、配当金があるタイプの保険においては、配当金は無くなります。
(5)保険タイプによる損失に注意(注)
払済保険に変更した場合、保険金額は変更時の解約返戻金相当額によって決定されます。よって、解約返戻金が少なければ金額も少なくなります。では特に、払済保険に変更する際に注意していただきたいタイプの保険をご紹介しておきます。
<1>低解約返戻金型の終身保険
保険料払込期間中の解約返戻金額を低くすることで、低解約返戻金型ではない終身保険に比べて保険料を抑え、保険料払込期間満了後に解約返戻率が上昇する終身保険です。
保険料払込期間中は、解約返戻金(返戻率)が少ない(低い)ので、特に注意が必要です。加入時に、保険料支払い中の払済保険への選択の可能性が少しでもあるのなら、そもそも低解約返戻金型の終身保険を選択することは絶対に避けるべきです。
<2>変額終身保険・変額個人年金保険
国内外の株式や社債等による運用実績で解約返戻金や死亡保険金額、年金額が決定される保険です。払済保険に契約変更する場合、その時点での解約返戻金額により保険金額等が決定されます。運用状況等には細心の注意が必要です。
※保険会社によって払済保険に変更できない場合があるので、検討する際は必ず保険会社にご確認してください。
■払済保険以外の保険料支払い困難時の2つの方法
➀契約者貸し付け
現在加入中の生命保険契約の解約返戻金の一定額の範囲内(80%~90%)を、保険会社から借り入れる方法です。保険料支払い困難時に直接関連するものではありませんが、まとまった資金が必要になった時等への対応策としても知っておきたい方法です。
保障をそのまま維持することができるメリットはありますが、貸し付けに対する利息がかかるのと、基本返済することも念頭に置くので、計画的に行いましょう。
②減額(一部解約)
受取る保険金額を減額(一部解約)することで、保険料の負担を減らすことができます。減額(一部解約)した部分に相応する解約返戻金を受取ることができます。
■まとめ
払済保険は、保険料の払込を停止し、これまで支払った保険料に対する解約返戻金をもとに、それに見合った死亡保障や、個人年金額等を継続することができる方法です。
一般に経済的な理由で保険料の支払い困難な時に利用されますが、通常継続するよりも払済保険への契約変更後が高利回りになる場合は、それを理由に払済契約に変更するケースもあります。ただ、払済保険に変更することで、保険会社は予定していた保険料収入が入ってこないので、保険会社から勧めてくることは稀な話。個人的な払済保険については、中立的な生命保険募集人にご相談することが良いでしょう!いい情報を貰えるはずです。
最後に、払済保険に契約変更した場合は、原則元の契約に戻すことはできません。払済契約変更して、元契約の特約保障を、新たに加入しようとしたら体況上の理由で加入できない場合もあり得ます。払済保険は、生命保険募集人等のプロに相談し、慎重に検討してから実行しましょう。
※当ブログは、生命保険及び損害保険の募集人資格はなく、保険商品の説明、契約締結の勧誘、保険契約の申込み受領、その他の保険契約の締結の代理又は媒介は行いません。具体的な保険商品の説明及び申込み等は、お近くの保険会社又は保険募集人等にご確認ください。